2022/02/16 16:14

 国内でも有数の筍産地、京都大原野。この地で慶応年間から100年以上にわたって筍農家を営む向井さんが育てる椎茸は、肉厚ジューシーで美味しいと地元で評判。強めの火力でジュンッと両面を焼いてカットした椎茸のステーキは、地元飲食店の人気メニューで、これを目当てに来店されるお客様も少なくないのだとか。もちろん筍は絶品で、全国的にも有名な京都の老舗料亭の板前さん達が直接買いつけ、いえ、直接掘り起こしに来られるほど。


 昨年2021年の春まだ浅い3月。飲食店オーナーからのご紹介で、向井さんの農園を訪れました。
 
 京都に住んで長い私も、筍農家さんの手入れの行き届いた竹林に入るのは初めてで、どこをどう歩いていいのか少々不安。特にこの時期、どこから筍の頭がでるか素人目にはわからないので、うっかり頭を踏んでしまうと市場価格一本〇万円の大事な筍の価値が下がってしまいます。ところが、向井さんに限らず多くの筍農家さんはどこから頭がでるかわかるので、目印をつけておくのだそうです。


 その目印を踏まないように気をつけながら竹林を進み向井さんの話を聞き、筍の掘りかたを教えていただきました。筍を掘る鍬は、地方によって形状が異なるそうで、写真のものは京都式たけのこ鍬(ほり)と言われるもの。その鍬で実際に筍を掘りながら、掘り進めかたや角度などなど、たくさん説明していただきました。向井さんの筍もですが、ここ大原野の筍は白く柔らかく、筍はこんなに美味しいものだったのかと感動するほど。灰汁は掘ってから時間の経過とともに強くなるので、なるべく早めに茹でて保存が美味しさを維持させるコツ。


 日本にも、中国、韓国にも竹林はたくさんありますが、美しいという言葉で表現できる竹林はほんの一握り。土の成分と有機肥料の割合や、光と風をまんべんなく通すための間引きの間隔、斜面を整備する技術は代々受継がれてきた貴重なもので、言葉にしようがないほどの職人技。それほど美しく整備された竹林の、どうしても陰になりがちな一面で原木椎茸を栽培されています。


 間引いていない竹林は、笹が重なり合い直射日光をさえぎりながらも風が抜ける椎茸の栽培に適した環境。そこに、自ら間伐したクヌギでホダ木を作り菌打ち。ホダ場が斜面にあるのでホダ木も長め。直径30㎝メートル近いクヌギのホダ木は女性では動かせないほどの重さで、ここまででもかなり体力と気力が必要な作業です。この後も日々の小さな手間ひまを重ね、肉厚で旨味の詰まった椎茸に育っていきます。



 向井さん曰く、竹林は「涼やか」で、穏やかな木漏れ日、風通し、湿気がいい。蓄積した笹葉の下にはカブトムシやクワガタの幼虫がたくさんいるのだそう。それほど、この竹林は肥沃で美味しい筍と椎茸が育つ環境が代々受継がれているということなのでしょう。


 ここ向井農園の干し椎茸、天日ではなく機械乾燥ですが香りと旨味が強く、やっぱり美味しい。そもそも向井さんの椎茸はサイズ的に大きいものが多いので、乾燥させても大きく肉厚。まあまあ高齢になられた最近、収穫のタイミングや乾燥の際の並べかたによる見た目のばらつきがありますが香りと味は絶品です。


 後継者がいないので、向井さんの筍も椎茸もいつか手に入らなくなるのかもしれません。なんとかしたい問題です。


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