2022/12/10 12:53

冬の筍

春の訪れとともに各地に出回る筍は、ずんぐりむっくり丸みがあって少し硬め。
若竹煮、木の芽和えのように春の食材とあわせた料理も多いイメージですが、冬には小ぶりで柔らかい希少な筍があるのをご存知ですか。

きれいに手入れをされた京都の大原野、塚原界隈では収穫されています。
とは言え、竹は自然のサイクルで生育されるので、必ず収穫できるものではなく、だからこそ価値が高い。


おせち料理

ずっと以前冬筍はおせち料理の一品として、京都の老舗料亭さんなどでとても重宝されていました。ですがここ数年で、老舗料亭のおせち料理も工場での大量生産へと変わったことから、今では京都の老舗料亭のお正月コースや、新年を祝う期間中のお料理に使われる程度。もともと必ず収穫できるものではない希少なものですが、筍農家さんが減った今ではさらに希少でめったにお目にかかれません。

おせち料理の食材には、それぞれ意味が込められていると言われます。
筍は成長が早く天に向かってまっすぐに伸びることから、子供たちの健やかな成長や、立身出世の願いが込められているそうです。


孟宗竹

日本で食されている筍のほとんどが中国原産の孟宗竹で、江戸時代の半ばに薩摩藩経由で持ち込まれ栽培が始まったようです。三国時代に呉の孟宗が、病床で筍を食べたいと言った母のために冬の雪山で筍を掘り当てたことに由来して、その名がつけられたのだそうです。中国ではそれほど古くから食されていた筍も、日本と同じく春が収穫の時期。中国の冬は日本よりも寒く、三国時代ともなれば今よりも雪山の竹林で冬筍を掘り出すことは困難だったのでしょう。だからこそ「ありえないもの」「得がたいもの」「孝心の深さ」のたとえとして、雪中の筍が故事に書かれているのではないでしょうか。

気候変動で冬も以前ほどの寒波に襲われることが少なくなった京都でも、冬の筍を見つけることも掘り出すことも、それほど簡単ではないことを考えると、得がたい貴重なものであることに変わりはないと思います。

冬本番、そろそろ冬の筍堀が始まりますが、残念ながら市場には出回りません。
この時期の貴重な冬筍の質で、春筍の質の良し悪しがわかると言います。来年2023年の春もまた、白くて柔らかい京都大原野、大枝塚原の白子たけのこがお届けできるよう、筍農家さん達は竹林を整える作業を日々続けています。


その様子を画像や動画でお見せしたいのですが、江戸の頃から続く筍農家さんそれぞれに代々受け継いだ技術なので、できれば公開したくないそうです。特にこの数年、技術を盗もうと隠し撮りをする、筍を盗みに来る人が増え、ついでにイノシシも増え困っています。それほど京都大原野、大枝塚原の筍は美味しくて高値で取引されているからということにはなりますが、手放しで喜ぶことができない話ですね。


楽しみに待っていただいている方に直接お届けしたい、喜んでいただきたいという思いで、ご高齢の農家さん達が広い竹林の整備を続けています。春シーズンが始まる前に、予約の受付をスタートする予定です。




月岡雪斎の描いた雪中筍の図
※画像引用元:ギャラリー北岡枝芳堂



※2022年春の価格です。
 2023年春の価格は変更になる可能性があります。