2024/03/06 13:10


3月、京都でも筍が芽をだし始めました。
まだ小さく、料亭や市場に出すことはできませんが一雨ごとに大きくなるこれから、家庭でも楽しんでいただける日はもうそろそろ。ただ残念ながら、えぐみがなくて甘い本当に美味しい京都大原野の筍は、ご自宅用としては価格が高め。その理由は手間のかけかたの違いだけでなく、もともとの土壌の良さを維持するためのあれやこれやの違いが大きいのだそうです。


京都にはいくつもの筍産地がありますが、どこの筍も同じではありません。
「白子たけのこ」と称される京都大原野の筍は、多くの人が抱く筍のイメージと少し異なります。


筍は「硬い」「少しえぐみがある」「灰汁が強い」

おそらく多くの人が、そんなイメージをもっているでしょう。
確かにそれは、間違いではありません。日本全国「筍は、だいたいこんなもの」というイメージが定着しているように思います。ですが本当は他の野菜と同じく、もともとの土壌、肥料、育てかた、掘るタイミングと掘りかたで、色も固さも甘さも、そして香りも違う。何より筍の特徴ともされる、えぐみ、灰汁の強さが違います。


筍には多少なりともえぐみがある

口に入れた瞬間の筍の香りがわかるそんなふうに思っている人は多いと思います。
ですが京都大原野の筍は、えぐみがない。もちろん農家さんにもよりますが、あったとしてもほとんど気にならない程度。喉の奥がなんとなくイガイガするような違和感を感じたことがない。朝堀った筍を、遅くても夕方ごろには灰汁抜きできる環境にいるからだろうと思っていました。


でもある日、それは違うことを知りました。
近所の農家さんからいただいた浅堀の筍が、いつもと違って少しえぐかった。いつもより灰汁も強くて、茹で汁にブワブワとした泡が立つ。それでも以前、スーパーで買っていた他のエリアのものより少ない。

翌日その農家さんから電話があり、こう言いました。
「昨日の筍、いつもと違う畑(竹林)のやつやねん。
 土と陽当たりが違うから、いつものよりだいぶ味が落ちるやろ。
 ちょっと、えぐいねん。言うの忘れとった。ごめんごめん。」

つまり、そういうことなのです。


筍は固いもの

これも確かにその通り。
ですがよくネットで目にするように、筍は茎なので根菜類のような固さとは少し違うと思いませんか。
小さな芽をだしぐんぐん伸びる過程で、空気と陽に触れ固くなっていくのだそうです。だからと言って、土の中にいる時はフニャフニャ柔らかいわけではありません。繊維質なのでそれなりに固い。でも空気と陽に直接触れたものほど繊維が太くはないので、噛んだ時に柔らかい感じがします。

ぐんぐん伸びて固くなる前に、小さな芽をだしたばかりのタイミングで掘る。噛んだ時にゴリゴリしないソフトな食感の筍は、掘るタイミングが大事なのです。


筍に香りはあるの?

口に入れた瞬間、淡く甘い独特の香りが広がります。
焼き筍が最も強くその香りを感じさえてくれると思いますが、家庭ではなかなかできません。

筍農家さんが時折、市場などに出せない傷ものや小ぶりのものを納屋の側で焼いてくれるのですが、その時の香りの良さと美味しさたるや言葉が見つからないほどです。同じように、大釜で茹でたばかりの筍をスライスしていただく「筍のお刺身(京都ではこう呼びます)」も、筍の淡い香りがよくわかります。わさび醤油が定番のように言われますが、山の幸には山の塩(岩塩)がよく合います。


人の味覚はそれぞれ。筍が育った環境によっても香りと甘さが違うので、どの筍でも香りが楽しめるわけではありませんが、できれば一度は経験してみていただきたい。日本に生まれてよかったと思っていただけるかもしれません。